温泉で健康促進をはかりたいと考える人は、日本人には数多いことでしょう。
湯治とは?
湯治とは、温泉地域に長期滞在して毎日温泉に浸かり、特定の病気や症状の回復をはかることを言います。
本来は、数泊程度の短期宿泊によるものや、「疲労を癒す」「リフレッシュする」という目的のものとは区別して使われます。しかし、「湯治」という言葉の求心力を濫用して、1泊や2泊の宿泊プランに「湯治」の名を冠しているものも、多く見受けられるのが実情です。
一般的な温泉旅行では病気の改善は期待できない。
多くの人々は温泉に行くとき、病気の改善や疲労回復を目的に考えていますが、実は現代日本で一般的な温泉旅行では、病気の改善も疲労回復もほとんど期待できません。むしろ逆効果と言えるほどです。
これは、温泉宿が商売に貪欲になりすぎてしまったために起きていることで、本当に病気改善や疲労回復を望んでいるなら、温泉旅行へのスタンスを一新しなければなりません。
温泉に健康効果があるのは本当。でも1~2泊では改善しない。
各地の温泉は、健康や美肌に関する効能を少なからず謳っています。しかし、1泊や2泊浸かる程度では、病気改善や美肌がありありと促進されたりはしないのです。
温泉の効果はサプリや食事療法と同じく緩やかなもの。
温泉の効能というのは、健康への有効成分を肌から微量に取り込んでいくものです。つまり、サプリメントや食事療法のように、じわりじわりと効果を発揮するものなのです。サプリメントや健康食材が1日2日食した程度ではほとんど効いていないように、温泉の薬効も1日2日浸かる程度ではほとんど効果はありません。
1~2泊の温泉旅行では、行き帰りの交通疲労のほうが大きい。
温泉は自然豊かな地にあることがもっぱらで、その風景に触れていることも健康作用やリフレッシュに効果的と言われていますが、しかし一般的に、温泉地の自然風景から得たリフレッシュよりも、行き帰りの交通でこうむるストレスのほうが大きく、トータルで見ると体が癒されたことにはなっていないのです。
温泉に定番の豪勢な食事は、健康にはよくない・・・。
また、温泉宿では、過剰なほどに豪勢な食事がふるまわれます。ご存じのように、ごちそうというのは健康に良いものではありません。さらには、温泉宿の会席では、お酒をたくさん飲む人が多く、それももちろん健康を害しています。
温泉に1日に何度も浸かるのは良くない。筋肉疲労を引き起こす。
なお、温泉に行くと一日に何度も温泉に浸かる人や長時間浸かる人がいますが、これらも健康には逆効果です。熱いお湯に長時間浸かっているいると、人の体はむしろ筋肉疲労を起こします。「温泉地ではよく眠れる」と感じている人が多いことかとは思いますが、これは温泉による癒し効果ではなく、全身が軽い筋肉痛状態であるため、部活から帰ってきた子供のように眠くなるのです。この軽い筋肉痛は一晩では治らないので、数日間は倦怠感を引きずります。
温泉も本当は、37℃くらいのぬる目の低温浴が理想的。
温泉は、40℃超の熱いお湯であることがもっぱらですが、健康面を考えるなら本当は37℃くらいのほうが好ましいです。美容に敏感な女性たちは、お風呂の温度はぬるめのほうが良いということを知っていることでしょう。
このように、様々な要因から、現代日本人の一般的な温泉旅行は、健康促進にはなっていないのです。
昔の人は、もっと違う形で温泉を活用していた。
昔の人々は、温泉をもっと違う形で健康に活用していました。それが「湯治」です。
湯治は長期滞在が大原則。
湯治では、温泉地に長期間滞在し、長期的に温泉に浸かります。そのため、各温泉が謳う薬効が、たしかに体に作用していきます。一般的には最低でも1カ月、3カ月も湯治療養する人もいました。江戸時代までは農業には休耕期間というものがあり、それによって長期の療養休暇がとれたのです。
もちろん、自然豊かな地に長期間いることが心身に良い影響を与えるのは言うまでもありません。
湯治は「自炊」と「質素」な食事も大原則。
さらに、昔ながらの湯治場では、「食事は自炊する」という大きな特徴があります。昔の湯治では、豪華な会席料理を食べたりはせず、質素な食事をしたのです。
いわゆる「田舎療養」と「温泉治療」を組合わせたものが湯治で、これはたしかに健康や病気改善に効果がありました。
長期滞在となるとお金の面が心配になるので、湯治を掲げる宿は極めて安い値段で温泉や部屋を開放していました。そのため、部屋は簡素なものでした。
現代にも自炊と長期滞在を可能とした格安の湯治宿が少しはある。
現代でも、自炊と長期滞在を基調とした湯治利用を提唱する温泉宿が、少なからず残っています。
しかしそれらも、素泊まりで4,000円くらいは取るのが一般的で、あまり長期湯治に相応しいとも言えません。
湯治を目的に温泉宿を選ぶなら、湯治場を謳う宿を選ぶべきです。湯治場を謳う宿の多くは、自炊のためのキッチンを宿泊客に開放しており、近くに安く食材の調達できるスーパーや商店があります。連日会席料理や外食を食べていると健康にはなれないので、自炊キッチンがあるか否かは非常に重要なポイントです。
なお、近年では、自炊場を持たない温泉宿が「湯治体験」と称して普通の宿泊プランを宣伝していることがあるので、注意が必要です。
湯治療養は1週間では全然足りない。1カ月は滞在すべき。
湯治という言葉について調べてみると、長期療養の定義として、「少なくとも一週間以上」としていることが多いのですが、1週間程度では病気の回復は期待できません。もちろん病気や症状にもよりますが、湯治によって病気改善をはかりたいなら、1カ月以上は滞在すべきです。
利益優先だから正しい情報が発信されない。
結局、温泉を推奨する人も湯治を推奨する人も、動機があくまでお金儲けなので、湯治について正しい情報を提供しているところは少なく、良心的な価格で提供しているところも少ないです。
関東にはまともな湯治場はほとんど無い。
関東に多い有名な温泉街には、湯治に適したエリア・温泉宿はほとんどありません。どれも商売を重視しすぎていますし、自炊キッチンのある宿は少なく、食材が安いスーパーも近くにはありません。東京都内ではなおさら、まっとうな湯治場を探すのは困難です。
無料の温泉とマンスリーアパートを組合わせるのが良いかも。
現代日本において湯治を考える場合、無料の温泉がそこかしこにあるような温泉街にマンスリーアパートやゲストハウスに宿を取って温泉に浸かるのが、コストパフォーマンスとしては良いでしょう。
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